美容院や理容室、ネイルサロン、エステサロン、マッサージ店。
こうしたサロンでは、当たり前のように店内BGMが流れています。
「お客様にリラックスしてもらいたい」
「店内が無音だと気まずい」
「お店の雰囲気に合わせたい」
といった理由で音楽を流している店舗も多いのではないでしょうか。
しかし、サロンにおけるBGMの役割を考えていくと、単なる「癒やしのための音楽」だけではありません。
音楽とリラックスやストレス反応の関係は研究されている一方で、実際のサロンでは、客層、接客スタイル、スタッフの年齢、店舗のビジネスモデルによって、BGMに求められる役割そのものが変わることがあります。
この記事では、音楽に関する研究と、実際にサロン経営者・美容師から聞いた話をもとに、サロンとBGMの関係について考えてみます。
音楽とリラックス・ストレスの関係は研究されている
音楽を聴くことと、人のストレス反応についてはさまざまな研究があります。
2013年に発表された研究
The Effect of Music on the Human Stress Response
では、ストレスを与える課題の前に音楽を聴いた場合の心理的・生理的反応が調べられました。
研究では、音楽を聴くことによって、ストレス後の自律神経系の回復などに違いが見られています。
また、日常生活における音楽とストレスの関係について調べた研究もあります。
Music Listening and Stress in Daily Life—a Matter of Timing
こうした研究から、音楽と人のストレスや気分との間に何らかの関係があることは分かっています。
ただし、
「ゆっくりしたピアノを流せば、サロンのお客様が必ずリラックスする」
とまでは言えません。
音楽の好みや、そのときの心理状態、音量、テンポ、環境などによって感じ方は変わります。
そのため、サロンのBGMも「リラックス効果がある曲」を探すというより、お客様が過ごす空間全体の一部として考える方が自然です。
マッサージと音楽を組み合わせた研究もある
サロンに比較的近い研究として、マッサージと音楽を組み合わせた研究があります。
2017年に発表された研究
The effects of massage and music on pain, anxiety and relaxation in burn patients
では、患者を対象に、音楽、マッサージ、両方を組み合わせた介入などが比較されました。
その結果、音楽やマッサージを用いたグループで、不安や痛み、リラックス状態に違いが確認されています。
また、2018年の研究では、患者が好む音楽とスウェディッシュマッサージを組み合わせた場合についても検討されています。
ただし、これらは医療環境で行われた研究です。
エステサロンやマッサージ店で日常的に流れているBGMと同じ条件ではありません。
したがって、
「この研究があるから、マッサージ店で音楽を流せば同じ効果がある」
とは言えません。
それでも、身体への施術と音楽を組み合わせた環境について研究が行われていることは、サロンの音環境を考えるうえで興味深い材料になります。
「お客様が好きな音楽」なら何でもいいわけではない
音楽の感じ方には個人差があります。
好きな音楽を聞けば心地よく感じる人もいれば、同じ曲を騒がしいと感じる人もいます。
また、サロンの場合は一人のお客様だけが音楽を聞いているわけではありません。
美容院であれば、
- カット中のお客様
- カラーの待ち時間のお客様
- スタッフ
- 受付
- 他のお客様
など、複数の人が同じ空間で音楽を聞きます。
特定の人が好きな音楽を選ぶだけではなく、その店舗にいる複数の人にとって違和感の少ない音楽を選ぶ必要があります。
これは、イヤホンで自分の好きな曲を聞くことと、店舗BGMの大きな違いです。
サロンではBGMが「接客」にも関係する
サロンは、一般的な小売店とは少し違います。
美容院なら30分から数時間、ネイルやエステでも一定時間、お客様とスタッフが同じ場所で過ごします。
つまり、サロンの商品には施術だけではなく、スタッフとのコミュニケーションや、その時間の過ごし方そのものも含まれます。
音楽には、空間を演出するだけでなく、会話のきっかけになる側面もあります。
例えば流行している曲が流れていれば、
「この曲最近よく聞きますね」
「このアーティスト好きなんですか?」
といった会話が生まれることもあります。
一方で、会話を中心に接客する店舗にとっては、音楽が前に出すぎないことの方が重要な場合もあります。
実際のサロン現場で話を聞いてみると、この違いがかなり明確に現れます。
9店舗を運営する美容院では「流行のJ-POP」も店舗運営の一部
複数店舗を運営する、ある美容院オーナーから興味深い話を聞きました。
そのサロンは、若い美容師を多く採用し、比較的手頃なカット料金で多くのお客様に利用してもらうビジネスモデルです。
そのオーナーは、店舗には必ずUSENを導入すると話していました。
理由は、お客様のためだけではありません。
若いスタッフが日常的に聞いている流行のJ-POPを店内で流すことも、店舗づくりの一部として考えているからです。
流行している音楽は、若いスタッフ同士の共通の話題になったり、お客様との会話のきっかけになったりします。
そのオーナーにとっては、BGMサービスの費用も、単なる「店内で音楽を流すためのお金」ではなく、スタッフが働く環境まで含めた必要経費という考え方でした。
もちろん、
「流行のJ-POPを流せばスタッフの離職が減る」
ということではありません。
これはあくまで、一つのサロン経営における考え方です。
ただ、BGMをお客様だけに向けたものではなく、そこで長時間働くスタッフの環境として考える視点は、サロンの音楽選びでは重要だと思います。
一方、少人数のベテラン美容師にはインストゥルメンタルが合うことも
一方で、少人数で営業するベテランの男性美容師からは、まったく違う話を聞きました。
その美容師にとって、接客で重要なのはお客様との会話です。
長年の経験があるため、流行している音楽を会話のきっかけにしなくても、お客様とのコミュニケーションをつくることができます。
むしろ、若い世代向けの流行曲ばかりが流れていると、
「この曲は誰だろう」
「最近の音楽は分からない」
となり、接客との相性が悪く感じることもあるそうです。
そのため、その美容師からすると、BGMはインストゥルメンタルで十分という考え方でした。
音楽が接客の主役になるのではなく、会話を邪魔せず、店内の空気を整える背景音として流れていればいい。
これも一つの合理的な選択です。
同じ美容院でも「正解のBGM」がまったく違う
この2つの話は対照的です。
一方は、
若手スタッフが多い・店舗数が多い・流行曲もコミュニケーションに使うサロン。
もう一方は、
少人数・ベテラン中心・会話そのものを接客の中心にするサロン。
どちらも美容院ですが、BGMに求めている役割が違います。
前者では、最新の楽曲を幅広く流せるサービスに費用をかけること自体に意味があります。
後者では、必ずしも最新のヒット曲を大量に用意する必要はなく、インストゥルメンタル中心のBGMでも十分かもしれません。
つまり、
「美容院におすすめのBGMは何ですか?」
という質問だけでは、本当は情報が足りません。
考えるべきなのは、
「どんな美容院なのか?」
です。
サロンのBGMはビジネスモデルから考えてもいい
サロンの音楽を考えるとき、多くの場合は客層から考えます。
もちろん、それも重要です。
しかし、実際の店舗では、
- スタッフの年齢
- スタッフ数
- 客単価
- 施術時間
- 回転数
- 接客スタイル
- 店舗数
- 採用する人材
- お客様との距離感
といった要素もBGM選びに関係します。
例えば、若いスタッフが多く、トレンドを店舗文化として取り入れたいサロンなら、最新曲を流せること自体に価値があるかもしれません。
反対に、一人や少人数で営業し、落ち着いた接客を重視するサロンなら、音楽が強く主張する必要はありません。
BGMは「客層」だけでなく、「そのサロンがどうやって商売をしているのか」から考える。
これはサロンの音楽選びではかなり重要な視点です。
高いBGMサービスが必要なサロンも、必要でないサロンもある
店舗BGMサービスにはさまざまな価格帯があります。
豊富な最新楽曲やチャンネルを必要とするサロンにとっては、それに費用を支払う意味があります。
先ほど紹介した複数店舗のサロンのように、流行曲を店舗文化やスタッフとのコミュニケーションにも利用しているのであれば、USENのようなサービスは必要経費になり得ます。
一方、
「最新のJ-POPは必要ない」
「施術中の会話を邪魔しない音楽があればいい」
「インストゥルメンタル中心でいい」
というサロンなら、BGMに求めている機能そのものが違います。
その場合は、必ずしも多額の費用をかけて膨大な楽曲を用意する必要はありません。
どのBGMサービスが優れているかではなく、自分のサロンに何が必要なのかを先に考えることが大切です。
サロンのBGMは「美容業だからこの曲」では決められない
一口にサロンと言っても、
- 美容院
- 理容室
- ネイルサロン
- エステサロン
- まつ毛サロン
- マッサージ店
では、お客様の過ごし方も大きく違います。
さらに同じ美容院でも、
- 若年層向け
- メンズ中心
- ファミリー向け
- 高価格帯
- 低価格・回転型
- 一人美容室
- 大型サロン
では、必要なBGMは変わります。
だからこそ、
「美容院だからこの音楽」ではなく、「このサロンだからこの音楽」
という考え方が必要です。
サロンでBGMを選ぶときに考えたいこと
サロンのBGMを選ぶ際には、例えば以下のような点を考えてみると分かりやすくなります。
- お客様の年齢層
- スタッフの年齢層
- スタッフ数
- 施術時間
- 客単価
- 店舗のコンセプト
- 接客中の会話量
- 内装
- 音楽のテンポ
- 音量
- ボーカルの有無
- 最新曲が必要かどうか
特に、お客様だけでなくスタッフについて考えることは、長時間営業するサロンでは重要です。
お客様は数時間で帰りますが、スタッフは一日中その音楽を聞きながら働きます。
店舗BGMは、顧客体験であると同時に、職場環境でもあります。
Store Soundではサロンの業態からBGMを選べます
Store Soundは、美容院やサロン、飲食店、クリニック、小売店など、店舗や施設で利用することを想定したBGMアプリです。
サロン向けには、業態ごとに専用チャンネルを用意しています。下記がその専用チャンネルです。
ただし、この記事で紹介したように、同じ美容院でもBGMに求める役割は異なります。
流行曲をスタッフやお客様とのコミュニケーションに活用したいサロンなら、それに対応できるサービスを選ぶべきです。
一方、最新ヒット曲を必要とせず、施術や会話の背景としてインストゥルメンタルを流したいサロンであれば、別の選択肢があります。
Store Soundは、インストゥルメンタルを中心に店舗で使いやすいBGMを用意しているサービスです。
だからこそ、すべてのサロンにStore Soundが正解だとは考えていません。
重要なのは、
「自分のサロンでは、音楽に何を求めているのか」
を明確にすることです。
お客様にリラックスしてもらうためなのか。
店舗の世界観をつくるためなのか。
スタッフが働きやすい環境をつくるためなのか。
接客中の沈黙を自然に埋めるためなのか。
その目的によって、必要なBGMもサービスも変わります。
BGMもまた、内装や照明、接客と同じように、そのサロンらしい時間をつくる要素の一つです。
具体的にサロンでどんな音楽を選ぶ?
この記事では、サロンと音楽の関係を、研究や実際のサロン現場から考えてきました。
実際に美容院やネイル・エステサロンでどんな音楽を選べばいいのかについては、Store Soundの「サロンでおすすめの音楽は?」でも詳しく紹介しています。
サロンの客層や空間に合わせた、具体的なBGMの選び方を知りたい場合はこちらも参考にしてください。
参考にした主な研究
- Thoma et al. (2013) The Effect of Music on the Human Stress Response
- Linnemann et al. (2018) Music Listening and Stress in Daily Life—a Matter of Timing
- Ghezeljeh et al. (2017) The effects of massage and music on pain, anxiety and relaxation in burn patients
- Ghezeljeh et al. (2018) Comparing the effect of patients preferred music and Swedish massage on anticipatory anxiety in patients with burn injury
