動物病院のBGMは何を流す?犬・猫のストレスと飼い主の待ち時間から考える音楽の選び方

動物病院のBGMは、クリニックと同じように考えてしまうと少しズレます。

待っているのは人だけではありません。

犬がいる。

猫がいる。

飼い主がいる。

診察を嫌がっている動物もいる。

キャリーの中でじっとしている猫もいる。

不安そうに周囲を見ている犬もいる。

そしてその様子を見ながら、飼い主も落ち着かない。

動物病院は、

「患者さんのための待合室」であると同時に、「動物と飼い主が一緒に緊張している空間」

でもあります。

だからStore Soundでは、動物病院のBGMを、

「人がリラックスできる音楽は何か」だけではなく、「犬や猫への刺激を増やさず、飼い主も落ち着いて待てる音環境とは何か」

から考えるのがよいと思っています。

目次

動物病院では、すでに刺激が多い

動物病院へ来るだけでも、犬や猫にとっては普段と違うことが続きます。

家を出る。

車や自転車で移動する。

キャリーに入る。

知らない場所へ来る。

知らない人がいる。

他の犬や猫の匂いがする。

鳴き声が聞こえる。

診察台に乗せられる。

身体を触られる。

注射や処置を受けることもある。

つまり動物病院では、BGMを流す前から十分に刺激があります。

だから、

音楽まで強い刺激にする必要はありません。

テンポが激しい。

音量が大きい。

突然音が変わる。

高低差の大きな音が続く。

といったBGMは、動物病院では慎重に考えた方がよいでしょう。

人間にとって「いい曲」であることと、動物病院に合うことは同じではありません。

犬と猫では、音楽への反応まで同じとは限らない

ここが動物病院の面白いところです。

人向けの店舗なら、基本的には人間がどう感じるかを考えます。

しかし動物病院では、

犬と猫が同じ音を聞いています。

しかも、犬と猫で音への反応が同じとは限りません。

実際、猫を対象にした研究では、一般的なクラシック音楽ではなく、猫の発声や聴覚特性などを意識して作られた「猫向け音楽」が検討されています。

2020年に発表された研究では、動物病院で診察を受ける猫に、

  • 無音
  • クラシック音楽
  • 猫向けに作られた音楽

を聞かせて比較しました。

その結果、猫向け音楽を聞いた場合には、無音やクラシック音楽と比べて、行動から評価したストレススコアや診察時の扱いやすさを示すスコアが低くなりました。

一方で、血液を用いた生理的なストレス指標には明確な差が確認されていません。

つまり、

「動物病院ではクラシックを流せば犬猫が落ち着く」

と単純には言えません。

むしろ、

人間向けの“癒やし音楽”と、動物にとって刺激の少ない音は必ずしも同じではない

ということを考える材料になります。

犬でも「音楽を流せば落ち着く」とは言い切れない

犬についても、音楽とストレスの関係は研究されています。

74頭の犬を対象に動物病院で行われた研究では、クラシック音楽を流した条件などが比較されました。

飼い主の満足度では、通常のクラシック音楽を聞いたグループの評価が、音楽なしより高かったという結果がありました。

一方で、犬の不安そのものについては、音楽だけで明確に改善したとは言い切れませんでした。

また、模擬的な動物病院受診を行った別の研究でも、クラシック音楽によって犬のストレス指標が明確に改善したとは確認されませんでした。

犬の入院環境などを対象とした研究をまとめた評価でも、クラシック音楽によるストレス軽減を示す根拠は限定的とされています。

だから動物病院の記事で、

「このBGMなら犬がリラックスします」

とは書かない方がよいでしょう。

音楽は動物のストレス対策そのものではなく、

院内環境を構成する一要素

として考えるのが現実的です。

一番大事なのは「音を足しすぎない」ことかもしれない

動物病院では、

犬が鳴く。

猫が鳴く。

受付で電話が鳴る。

スタッフが話す。

診察室から声が聞こえる。

ドアが開く。

キャリーを置く音がする。

いろいろな音があります。

ここにさらに大きなBGMを加えると、院内全体の音量が上がってしまいます。

動物病院でBGMを使うなら、

「賑やかにするため」ではなく、「院内の背景を穏やかにするため」

くらいがちょうどいいでしょう。

音量も、人間側だけで判断しない方がよさそうです。

受付では小さく感じても、スピーカーのすぐ近くにキャリーを置く場所があれば、動物には近距離で音が聞こえます。

待合席だけでなく、動物が実際にいる高さや位置まで考える。

これは人間向けのクリニックとは少し違う視点です。

猫のキャリーをスピーカーの真下に置いていないか

たとえば待合室で、

猫をキャリーに入れたまま足元に置く。

ベンチの横に置く。

棚の上に置く。

といったことがあります。

そのすぐ上にスピーカーがあれば、

スタッフには普通の音量でも、猫にはかなり近い位置から音が流れることになります。

動物病院でBGMを導入するときは、

「店内全体で何dBか」だけではなく、動物が待つ場所とスピーカーとの位置関係

も見ておいた方がよいでしょう。

BGMは設備として流すだけで終わりではありません。

どこで、誰が聞くのか。

動物病院では、その「誰」に犬や猫も含まれます。

犬の鳴き声をBGMで消そうとする必要はない

待合室で犬が鳴いている。

その声を目立たなくするためにBGMを大きくする。

これはあまりよい解決策ではありません。

犬の鳴き声を完全に隠そうとすれば、かなりの音量が必要になります。

そうなれば、

別の動物。

飼い主。

受付スタッフ。

診察室。

にも影響します。

BGMは防音設備ではありません。

鳴き声を消すためではなく、鳴き声や受付音だけが院内のすべてにならない程度の背景

として考える方が自然です。

飼い主も、少なからず緊張している

動物病院で不安なのは犬や猫だけではありません。

飼い主も、

「大丈夫かな」

「何か病気だったらどうしよう」

「注射嫌がるだろうな」

「今日はちゃんと診てもらえるかな」

と考えながら待っています。

特に、

食欲がない。

突然元気がなくなった。

ケガをした。

検査結果を聞きに来た。

という場合、楽しい気持ちで待合室にいるわけではありません。

犬を対象にした動物病院での研究では、クラシック音楽を流した条件で飼い主の来院満足度が高かった例もあります。

これは、

「クラシックを流せば飼い主が満足する」

という意味ではありません。

ただ、

動物病院の音環境は、動物だけでなく飼い主の体験にも関わる

ことを考える材料になります。

動物のためだけに特殊な音楽を用意する必要があるのか

猫向け音楽の研究を見ると、

「じゃあ動物病院では猫専用音楽を流すべきなのか」

と思うかもしれません。

必ずしもそうとは限りません。

犬もいる。

猫もいる。

人もいる。

スタッフも一日中そこにいる。

一つの待合室を全員が共有する動物病院では、

一種類の動物だけに最適化した音を流すことが、本当に院全体に適しているか

は別の問題です。

研究としては非常に興味深いですが、一般的な動物病院のBGM運用へそのまま当てはめることはできません。

実務では、

刺激が強すぎない。

突然大きな音が出ない。

音量を抑える。

院内の雰囲気から浮かない。

という基本的な条件の方が扱いやすいでしょう。

入院中の犬や猫と、待合室では条件が違う

犬の音楽研究には、動物保護施設や入院環境を対象にしたものもあります。

たとえば保護施設の犬を対象にした研究では、クラシック音楽を流した際に、横になったり静かにしている時間が増えるなどの変化が確認された例があります。

別の研究では、クラシックだけでなくソフトロック、レゲエなど複数ジャンルへの反応も調べられています。

ただし、

何時間もケージで過ごす環境と、診察前に短時間待つ動物病院では条件が違います。

入院中の猫を対象にした研究でも、猫向け音楽やクラシック音楽によるストレスへの影響は、すべての指標で一貫して確認されたわけではありません。

研究を参考にするときは、

「犬猫に音楽は効く」とひとまとめにしないこと

が大切です。

テレビとBGMを両方流す必要はない

動物病院によっては、待合室にテレビがあります。

ペットの健康情報。

病院からのお知らせ。

動物番組。

などを流していることもあるでしょう。

そのテレビに音声があるなら、さらにBGMまで流すことで音が増えすぎる場合があります。

テレビ音声。

犬の鳴き声。

スタッフの声。

受付の電話。

BGM。

これが全部重なれば、静かな環境とは言えません。

動物病院では、

「BGMを流した方がいいか」ではなく、「今この待合室には何の音があるか」

を先に確認した方がよいでしょう。

テレビがあるならBGMを流さない。

テレビを無音にしてBGMを使う。

待合室だけ小さく流す。

そういった運用も考えられます。

動物病院で使いやすいBGM

動物病院に絶対的な正解ジャンルはありません。

また、研究から「このジャンルなら犬猫が必ず落ち着く」とも言えません。

そのうえで、院内の背景音として使うなら、比較的刺激の少ないインストゥルメンタルが扱いやすいでしょう。

ヒーリングピアノ

急激な音の変化が少ないものなら、落ち着いた待合室に合わせやすいでしょう。

静かなピアノ

BGMの存在感を抑えたい動物病院で使いやすい音です。

やさしいアコースティック

明るく親しみやすい院内で使いやすいでしょう。

穏やかなインスト

ジャンル名そのものより、テンポや音量、音の変化が激しくないことを優先して選ぶ方がよいでしょう。

そして何より、

音量を上げすぎないこと

が重要です。

YouTubeで「犬が落ち着く音楽」を流せばいい?

YouTubeには、

「犬が落ち着く音楽」

「猫がリラックスする音楽」

といった動画が多数あります。

手軽なので、使いたくなる気持ちは分かります。

ただし、

動画タイトルに「犬が落ち着く」と書かれていることと、科学的に効果が確認されていることは別です。

さらに、個人向けの動画サービスを店舗でBGMとして利用する場合には、利用条件の確認も必要です。

店舗運用としても、

広告。

突然の音量変化。

動画停止。

意図しない次の動画。

などが起こる可能性があります。

動物病院では、突然大きな音が出ること自体を避けたいところです。

「刺激の少ない音が流れていれば十分」だからこそ、再生環境まで安定させる。

その考え方が合う病院もあります。

Store Soundが合いやすい動物病院

Store Soundは、インストゥルメンタル中心の店舗向けBGMサービスです。

そのため、

  • 待合室に穏やかな背景音があれば十分
  • 犬や猫への刺激を必要以上に増やしたくない
  • 大きな音や突然の広告音声を避けたい
  • 飼い主にも静かに待ってほしい
  • 有名曲を細かく選ぶ必要はない
  • 毎日プレイリストを考えたくない
  • スタッフのBGM管理を増やしたくない
  • YouTubeを流しっぱなしにはしたくない
  • 店舗用BGMとして必要な部分だけ整えたい

といった動物病院では使いやすい選択肢になります。

ただしStore Soundは、

犬や猫のストレスを軽減することを目的とした動物専用の音楽療法サービスではありません。

ここは明確に分けて考える必要があります。

Store Soundができるのは、

人にも動物にも邪魔になりにくいインストBGMを、院内の背景としてシンプルに流すこと。

それで十分な動物病院のための選択肢です。

動物病院のBGMは「犬や猫まで聞いている」と考える

動物病院の待合室を想像してみます。

飼い主の足元にキャリーがある。

中には猫がいる。

向かいには犬が座っている。

受付では電話が鳴る。

診察室からスタッフの声が聞こえる。

時々、犬が鳴く。

飼い主は自分のペットを気にしながら順番を待っている。

そこにBGMを足すなら、

さらに刺激を増やす音ではなく、その場所の背景になれる音

の方が自然です。

人間にとって心地いいか。

だけでは足りません。

犬はどうか。

猫はどうか。

スピーカーから近すぎないか。

すでに院内が十分うるさくないか。

そこまで考える必要があります。

Store Soundでは、動物病院のBGMを、

「動物を音楽でリラックスさせるためのもの」ではなく、「犬や猫まで同じ空間で聞いていることを忘れず、院内に余計な刺激を増やさないための背景音」

として考えています。

動物病院では、人だけに向けて音楽を選ばない。

それが、ほかのクリニックとは少し違うBGMの考え方ではないでしょうか。

クリニックや医療施設全体におけるBGMの役割、待合室の音楽と不安・ストレスに関する研究については、「クリニックと音楽の関係」でも詳しく紹介しています。

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