エステサロンのBGMは、単に「リラックスできる音楽」を流せばよいわけではありません。
もちろん、ヒーリングピアノやオルゴール、アンビエントのような穏やかな音楽は使いやすいでしょう。
ただ、エステで音楽に求められているのは、緊張をやわらげることだけではありません。
施術を受ける時間そのものを、日常とは少し違うものに感じてもらう。
照明、香り、ベッドの感触、スタッフの声、そして音楽まで含めて、
「ここにいる間は普段の時間とは違う」
と感じられる空間をつくることも、BGMの役割です。
そのためStore Soundでは、エステサロンのBGMは、
リラックス × 没入感 × 非日常感 × 店舗ブランド
から考えるのがよいと考えています。
クリニックとエステは似ている。でも音楽の目的は少し違う
落ち着いたBGMを使う業態として、エステとクリニックはよく似ています。
どちらも大音量のJ-POPや、歌詞が強く耳に入ってくる音楽より、穏やかなインストゥルメンタルが使いやすい空間です。
ただし、音楽に求める目的は少し違います。
クリニックでは、
- 待ち時間の不安をやわらげる
- 緊張しすぎない空間をつくる
- 無音による居心地の悪さを減らす
といった、不安やストレスを小さくする役割が中心になります。
一方、エステでは、
- リラックスしてもらう
- 施術へ意識を向けてもらう
- 日常生活から気持ちを切り替えてもらう
- 店舗の高級感や世界観を伝える
といった、体験そのものを豊かにする役割が大きくなります。
同じ静かな音楽でも、
クリニックでは「マイナスを減らす音」
エステでは「プラスの体験をつくる音」
という違いがあります。
エステではBGMも「空間全体」の一部として考える
サービス空間におけるBGMについては、音楽だけを切り離して考えるより、店内環境全体との組み合わせを見ることが重要です。
2007年に『Journal of Retailing』で発表された研究では、サービス空間における心地よい音楽が、空間全体に対する印象やサービス提供者への評価、購買意向などと関係する仕組みが検討されています。 (sciencedirect.com)
ここで興味深いのは、「音楽を流せば直接サービス評価が上がる」という単純な話ではないことです。
音楽は、サービス空間全体の印象の一部として作用します。
これはエステを考えるうえでも重要です。
たとえば、
- 照明は暖かく暗め
- 香りも穏やか
- スタッフの話し方も静か
- 内装も落ち着いている
のに、BGMだけが明るいヒットチャートでは、空間全体の方向性が揃いません。
逆に、
照明・香り・接客・内装・音楽が同じ方向を向いている
と、店舗の世界観は伝わりやすくなります。
エステのBGMは単独で考えるより、サービス空間を構成する一つの素材として考える方が自然です。
エステでは「何を聴かせるか」より「どんな時間に感じてもらうか」
エステサロンでは、音楽そのものを楽しみに来店する人は多くありません。
むしろBGMは、意識されないくらい自然に空間へ溶け込んでいる方が使いやすい場合があります。
施術を受けながら、
「いい曲だな」
と意識してもらうことより、
「なんとなく落ち着く」
「ここにいると時間がゆっくり感じる」
と思ってもらう。
その方が、エステではBGMとして機能している場合があります。
つまり音楽選びのスタート地点は、
「何のジャンルを流すか」ではなく、「お客様にどんな時間を過ごしてほしいか」
です。
「ヒーリング音楽なら必ずリラックスする」とまでは言えない
エステと音楽を考えると、「ヒーリング音楽にはリラックス効果がある」と言いたくなります。
ただし、ここは少し慎重に考える必要があります。
2020年に健康な大学生46人を対象として行われたランダム化クロスオーバー試験では、ポップ、ロック、西洋クラシック、ペルシャ伝統音楽、そして静寂をそれぞれ15分間体験してもらい、不安とリラックス状態を比較しています。
各音楽条件では不安低下やリラックスの改善が見られたものの、静寂と比較して明確に優れていたジャンルは確認されませんでした。 (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
つまり、
「ヒーリングピアノを流せば科学的にリラックスできる」
と単純に断定することはできません。
これはむしろ、エステのBGMを考えるうえで重要なポイントです。
Store Soundでは、エステの音楽を「リラックス効果を起こす装置」としてではなく、
照明や香り、施術、接客と一緒に、その店らしい時間をつくる環境要素
として考える方が自然だと考えています。
音楽と身体への施術を組み合わせた研究もある
一方で、身体への施術と音楽を同時に用いた環境で、リラクゼーションとの関係を調べた研究もあります。
2017年に熱傷患者240人を対象として行われたランダム化比較試験では、
- 通常ケア
- 好みの音楽
- スウェディッシュマッサージ
- 音楽+マッサージ
の4群が比較されました。
音楽群、マッサージ群、音楽+マッサージ群では、通常ケアと比べて、痛みや不安の低下、リラックス度の上昇が確認されています。 (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ただし、これは病院で治療を受ける熱傷患者を対象とした研究であり、エステサロンの効果を直接示す研究ではありません。
「エステでも同じ効果がある」と結論づけることはできません。
それでも、身体への施術と音楽を組み合わせた環境そのものが、リラクゼーションとの関係で研究されている例としては参考になります。
エステでも、BGMだけで何かを起こそうとするのではなく、施術・照明・香り・接客などと一緒に考える方が現実的でしょう。
エステは視覚情報が減るぶん、音が目立ちやすい
エステでは、施術中に目を閉じている時間が長くなります。
フェイシャルではタオルをかけたり、照明を落としたりすることもあります。
ボディトリートメントでも、お客様はベッドに横になり、周囲を見ながら過ごすわけではありません。
つまり施術中は、普段より視覚情報が少なくなります。
そのぶん、
- 音楽
- スタッフの声
- タオルや器具の音
- 空調音
- 廊下や隣室の話し声
など、耳から入る情報が目立ちやすくなります。
だからこそ、エステではBGMの選び方だけでなく、音量や音の途切れ方まで含めて考えた方がよいでしょう。
どれだけ高級な内装でも、突然大きな音が鳴ったり、曲ごとの音量差が大きかったりすれば、施術への没入感が途切れることがあります。
エステでは曲単体より、空間として音が自然につながっていることも大切です。
歌詞のある曲よりインストが使いやすい理由
エステサロンでJ-POPやK-POPが絶対に使えないわけではありません。
ただ、リラックスや没入感を重視する店舗では、歌詞のないインストゥルメンタルの方が使いやすいでしょう。
歌詞には意味があります。
知っている曲なら、
「この曲好きだな」
「あのドラマで流れていた曲だ」
と意識が音楽へ向くこともあります。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、エステで日常から意識を切り離し、施術に身を任せてもらうことを重視するなら、音楽そのものへの注意を強く引きつけない方が都合のよい場合があります。
そのため、
- ヒーリングピアノ
- オルゴール
- アンビエント
- 穏やかなアコースティック
- 自然音を取り入れたインスト
などが使いやすくなります。
エステでは「時間を忘れられること」も価値になる
エステは30分、60分、90分など、一定時間じっくり施術を受けるサービスです。
その時間を、
「あと何分だろう」
と何度も意識するより、
「気づいたら終わっていた」
と感じてもらえる方が、その店の目指す体験に合うこともあります。
そのため、刺激が強く曲調の変化が大きいBGMより、音量や雰囲気の変化が穏やかな音楽の方が使いやすい店舗があります。
エステでは、
「何曲聴いたか覚えていないくらい自然だった」
という状態が、むしろ理想的なBGMになることもあります。
高単価のエステほど「何を流さないか」もブランドになる
エステサロンでは、価格帯によってお客様が期待する体験も変わります。
短時間・低価格で気軽に利用できる店舗と、完全予約制で長時間の施術を提供する高価格帯店舗では、同じBGMが最適とは限りません。
特に高単価・高付加価値を打ち出す店舗では、
「何を流すか」だけでなく、「何を流さないか」
もブランド設計になります。
たとえば、内装や接客を落ち着いた方向で統一しているのに、
- テレビの音声
- 広告
- 強い歌詞の楽曲
- 頻繁な曲調の変化
が入れば、非日常感が薄れる可能性があります。
反対に、音楽の主張を抑えることで、
施術そのものや店内の静けさを価値として感じてもらう
こともできます。
エステではBGMを足すだけでなく、余計な音を引くことも空間づくりです。
エステで使いやすいBGMジャンル
ヒーリングピアノ
エステでは使いやすいジャンルの一つです。
旋律が穏やかで、歌詞がなく、施術中の背景に置きやすい特徴があります。
オルゴール
柔らかな音色で、リラックスを前面に出したい店舗と合わせやすい音楽です。
ただし、高音域が強すぎるものや旋律が目立つ曲は、長時間では耳につくこともあります。
アンビエント
音楽らしい展開を前面に出さず、空間そのものを包むような使い方ができます。
静けさや非日常感を重視する店舗と相性があります。
アコースティック
完全に静かな雰囲気ではなく、少し温かみのある空間にしたい場合に使いやすいジャンルです。
自然音を取り入れた音楽
水、雨、森などの自然音を穏やかな音楽と組み合わせる方法もあります。
ただし、「自然音だから必ずリラックスする」というより、店舗コンセプトとの相性で選ぶ方がよいでしょう。
エステでは音量も空間設計の一部
リラックスを重視すると、
「とにかく小さい音で流せばいい」
と考えたくなります。
しかし、音が小さすぎると逆に、
- スタッフの足音
- 隣室の会話
- 廊下の音
- 空調音
- 器具の動作音
などが目立つ場合があります。
エステではBGMを聴かせることだけでなく、店内の細かな生活音を自然に包むことも役割の一つです。
音楽が意識に入りすぎない。
それでも完全な無音にはならない。
店舗ごとの環境に合わせて音量を調整することが重要です。
エステでもYouTubeや個人向け音楽サービスの利用には注意
個人サロンでは、普段使っているYouTubeや音楽配信サービスをそのまま使いたくなることもあります。
ただし、個人で音楽を聴く場合と、店舗でBGMとして利用する場合では扱いが異なることがあります。
店舗で利用する際は、楽曲の著作権だけでなく、各サービスの利用条件も確認する必要があります。
毎日営業中に利用するのであれば、店舗利用を前提としたBGMサービスを選ぶ方法があります。
Store Soundが合いやすいエステサロン
Store Soundはインストゥルメンタル中心の店舗向けBGMサービスです。
そのため、
- J-POPなどの有名曲を必要としていない
- リラックスできる空間をつくりたい
- 音楽を主役にしたくない
- ヒーリングピアノなど穏やかな音楽を流したい
- 長時間流しても主張しすぎないBGMがほしい
- 選曲に時間をかけたくない
- 店舗利用できるBGMを簡単に使いたい
といったエステサロンでは使いやすい選択肢になります。
エステは、Store Soundのようなインスト中心のBGMサービスと比較的相性のよい業態です。
一方で、ブランドの一部として特定の有名アーティストや楽曲を使用したい店舗には向いていません。
その場合は、それらの楽曲を店舗利用できるサービスを選ぶ方が目的に合っています。
エステのBGMは「癒やす」だけではなく「特別な時間をつくる」
エステのBGMを考えるとき、
「リラックスできる音楽」
という言葉だけでは少し足りません。
研究を見ても、「特定のジャンルを流せば必ずリラックスできる」と単純には言えません。
一方で、サービス空間における音楽は、空間全体の印象と結びついて評価されることが研究されています。 (sciencedirect.com)
だからStore Soundでは、エステのBGMを、
「お客様を音楽の力でリラックスさせるもの」
というより、
「お客様がリラックスできる時間と空間を構成する一つの要素」
として考えています。
エステでお客様が買っているのは、施術だけではありません。
忙しい日常から少し離れて、自分のために時間を使うこと。
静かな空間で身体を預けること。
普段とは違う香りや照明の中で過ごすこと。
その体験全体に価値があります。
だからBGMも、
緊張を取り除くためだけの音ではなく、その時間を日常から切り離すための音
として考える。
クリニックが「不安を小さくする音」を必要とする場所だとすれば、エステは、
「日常より少し特別な時間をつくる音」
を必要とする場所。
そこが、エステサロンのBGMを考えるうえで大きな違いです。
サロン全体における音楽の役割については、「サロンと音楽の関係」の記事でも詳しく紹介しています。
