寿司店のBGMは、和食店と似ているようで少し違います。
特にカウンター中心の寿司店では、料理だけでなく、
- 職人の手仕事
- 包丁や器の音
- ネタの説明
- 職人との会話
- 提供されるテンポ
- 店内の静けさ
そのものが食事体験の一部になります。
そのためStore Soundでは、寿司店のBGMは、
「寿司に合う音楽を流す」より、職人・寿司・会話のどれも邪魔しない音環境をつくる
という考え方が合いやすいと思っています。
一方、個室を備えた寿司店では事情が変わります。
接待や会食で利用される個室では、BGMに周囲の会話や生活音を少し目立ちにくくする背景音としての役割を持たせることもできます。
つまり寿司店では、
カウンターなのか、個室なのか
によってBGMの意味そのものが変わります。
寿司店は和食店の中でも「人の動き」が見える
料亭や会席料理では、料理が完成した状態で客席へ運ばれてくることが多くあります。
一方、寿司店のカウンターでは、目の前で職人が仕事をします。
魚を切る。
シャリを握る。
ネタを合わせる。
一貫ずつ差し出す。
そしてお客様は、できたものをその場ですぐ食べる。
寿司カウンターについて解説する資料でも、カウンターは職人と客との距離が非常に近く、調理の様子を見ることや職人とのやり取りそのものが体験の一部として紹介されています。 (washoku-school.com)
この構造を考えると、寿司店ではBGMを前面に出す必要性があまりありません。
むしろ、
職人の手仕事を邪魔しないこと
の方が重要です。
寿司店は「流行りの音楽を楽しむ空間」ではない
高単価の寿司店、とくにカウンター中心のおまかせでは、音楽そのものを楽しむことが来店目的ではありません。
職人の手仕事を見る。
ネタの説明を聞く。
一貫ずつ食べる。
会話を楽しむ。
こうした時間が主役です。
そのため、最新のJ-POPやK-POPなど、知っている曲が次々に流れる環境は、店によっては寿司そのものへの集中を弱める可能性があります。
もちろん、カジュアルな寿司店では流行曲が合う場合もあります。
ただし、料亭に近い格式や高価格帯のおまかせ寿司では、
「流行っているから流す」必要性は低い
でしょう。
むしろ、和ジャズや静かなジャズ、アンビエント、和楽器など、音楽そのものが前に出すぎないBGMの方が、寿司・職人・会話を主役にしやすくなります。
寿司店では、
寿司に合う曲を探すというより、寿司以外を主役にしない音を選ぶ
という考え方が合っています。
おまかせ寿司では「職人との会話」も料理の一部になる
高価格帯の寿司店では、おまかせ形式も多く見られます。
おまかせでは、職人がその日の魚や状態を見ながら料理を組み立て、一貫ずつ提供していきます。
カウンターでは、職人がネタについて説明したり、お客様が産地や旬について質問したりすることもあります。
実際、寿司カウンターについての解説でも、職人との直接的なコミュニケーションがカウンター体験の重要な特徴として説明されています。 (amamotolondon.com)
ここでBGMが大きすぎると、
「今日の白身は○○です」
「これはどこの魚ですか?」
といった会話そのものが聞き取りにくくなります。
寿司店のカウンターでは、
音楽より職人の声が前にあること
を基準にした方が自然です。
高級寿司ほど「静けさ」を残すという選択肢もある
寿司店では、
無音に近いこと自体が悪いとは限りません。
特に小さなカウンター店なら、
- 包丁の音
- 器を置く音
- 酒を注ぐ音
- 職人の声
- お客様の小さな会話
だけでも、すでに店内には音があります。
むしろこうした音が、寿司店らしさをつくっています。
そのため、
高級寿司店だから高級感のあるジャズを流さなければならない
というわけではありません。
店が静けさを価値として成立させられるなら、BGMを極端に小さくしたり、場合によっては使わなかったりすることも一つの選択肢です。
ただし完全な無音が合うのは小さなカウンターだけではない
一方で、すべての寿司店が8席程度の小さなおまかせ店ではありません。
テーブル席がある。
複数のグループが同時に食事をする。
個室が並んでいる。
受付やスタッフの出入りが多い。
こうした店舗では、完全な無音にすると、
- 隣のグループの会話
- スタッフの声
- 食器の音
- ドアの開閉音
などが逆に目立つことがあります。
このときBGMには、
寿司を演出する音楽というより、店内全体に一定の音の背景をつくる役割
が出てきます。
個室の寿司店ではBGMが「会話のプライバシー」に関係することも
寿司店は、接待や商談、家族の顔合わせなどで使われることがあります。
個室を備えた店舗では、
隣室や廊下に会話がどの程度聞こえるか
も店内環境の一部です。
複数グループが会話する飲食空間を対象にした研究では、BGMの音量と、会話の聞き取りやすさ・スピーチプライバシー・音響的な快適さとの関係が検討されています。 (journals.sagepub.com)
もちろん、普通のBGMだけで会話を完全に隠せるわけではありません。
遮音性能や間仕切りの構造の方が根本的には重要です。
ただし、周囲が完全な無音の場合より、適度な背景音がある方が、隣の会話へ意識が向きにくくなる場合があります。
そのため個室中心の寿司店では、BGMに、
料理の雰囲気づくり+周囲の会話音を少し目立ちにくくする
という二つの役割を持たせる考え方があります。
カウンターと個室では、同じ寿司店でもBGMの目的が違う
寿司店の記事で一番重要なのはここです。
カウンター
カウンターでは、
職人の手仕事と会話を邪魔しない
ことが優先されます。
BGMはかなり小さくても成立します。
場合によっては、ほとんど流さないという選択もあります。
テーブル席
複数のお客様がいる空間では、適度なBGMによって店内の生活音をなじませる方法があります。
個室
個室では会食や接待で使われることもあるため、
周囲の会話を少し意識しにくくする背景音
としてBGMを使う意味もあります。
つまり、
「寿司店ならこの音楽」ではなく、客席の構造によって音楽の役割が変わる
わけです。
寿司店に和楽器は合う?
寿司も日本を代表する料理なので、琴や尺八などの和楽器は自然な選択肢に見えます。
実際、
- 訪日外国人のお客様が多い
- 日本文化を体験してもらいたい
- 和の内装を強く打ち出している
といった店舗では、和楽器が店の世界観を補強する場合があります。
ただし、寿司店の場合は和食店以上に、
職人の仕事そのものに「日本らしさ」がある
という特徴があります。
カウンターの木。
包丁。
器。
魚。
職人の所作。
一貫ずつ提供される寿司。
これだけですでに、日本らしい体験はかなり強く伝わります。
そのため、
「寿司だから和楽器を流さなければならない」
わけではありません。
特にモダンなおまかせ寿司では、和ジャズや静かなジャズ、アンビエントなどの方が店のデザインに合う場合もあります。
海外客が多い寿司店では「分かりやすい日本らしさ」を足すこともできる
一方で、海外からのお客様が多い店舗では、和楽器を使う意味が少し変わります。
海外客にとって寿司店は、
料理を食べるだけでなく、日本文化そのものを体験する場所
になる場合があります。
そのとき、
- 和の内装
- 日本酒
- 器
- 職人の所作
- 和楽器の音
が一つの方向を向けば、日本らしい体験をより分かりやすく伝えることができます。
ただし、これも演出しすぎる必要はありません。
目の前で職人が寿司を握るカウンターなら、それ自体がかなり強いコンテンツです。
BGMは、
日本らしさを主役にするものではなく、すでにある体験を少し補強するもの
くらいの位置づけが使いやすいでしょう。
寿司店でJ-POPを流すのはあり?
もちろん、絶対にダメという話ではありません。
カジュアルな寿司店や若い客層が中心なら、J-POPが店の雰囲気に合うこともあります。
ただ、高単価のおまかせ寿司や接待利用が多い店舗では、
- 歌詞に意識が向く
- 職人との会話と重なる
- 店の静けさを崩す
- 流行曲そのものが店内体験の主役になりやすい
といったことがあります。
そのため、こうした寿司店ではインストゥルメンタルの方が使いやすい場合があります。
重要なのは、
寿司という料理ではなく、どんな寿司店なのか
です。
寿司店で使いやすいBGM
和ジャズ
日本らしさを少し残しながら、現代的な空間にも合わせやすい音楽です。
モダンな寿司店や、海外客も多い店舗に使いやすいでしょう。
ジャズ
高単価の店舗でも使いやすく、会話を邪魔しにくいインストを選べば、現代的な寿司店にも合わせやすくなります。
和楽器
日本文化を強く体験してもらいたい店舗に向いています。
ただし、カウンターでは存在感が強すぎない曲の方が使いやすいでしょう。
ヒーリングピアノ
個室中心の店舗や、会話を主役にしたい空間では、静かな背景音として使えます。
アンビエント
非常にモダンな寿司店や、音楽らしい主張を極力減らしたい店舗で選択肢になります。
ほぼ無音
小さなカウンターで、職人の仕事と会話だけで十分に空間が成立している店舗では、これも一つの正解です。
店舗運営がアナログでも、BGMだけは別に考えていい
寿司店の中には、営業オペレーションをかなりシンプルにしている店舗もあります。
たとえば現金決済を中心にしている場合、キャッシュレス決済のためだけに固定回線やプロバイダ契約を持ちたくないという考え方もあります。
実際に、キャッシュレス決済を導入するためだけに毎月の通信費を増やしたくないため、SIM通信を内蔵したマルチ決済端末を選ぶ店舗の話を聞いたことがあります。
これはBGMそのものの話ではありません。
ただ、寿司店では、
必要なものには費用をかける一方、不要な固定費や設備は持ちたくない
という考え方の店舗もあります。
BGMでも同じで、
「高級店だから高額な音楽設備が必要」
とは限りません。
店の体験に必要な音だけを、必要な方法で用意する。
寿司店のように職人・料理・会話がすでに主役になっている業態では、こうしたシンプルな考え方も合います。
Store Soundが合いやすい寿司店
Store Soundはインストゥルメンタル中心の店舗向けBGMサービスです。
そのため、
- 有名曲を流す必要がない
- 流行曲を店内体験の中心にしたくない
- 職人との会話を邪魔したくない
- 和ジャズや和楽器を小さく流したい
- モダンな寿司店に合う背景音がほしい
- 個室にも一定のBGMを入れたい
- 音楽選びに時間をかけたくない
- 店舗利用できる音源を簡単に使いたい
といった寿司店では使いやすい選択肢になります。
特に、
「音楽で店を演出したい」より、「寿司や会話を主役にしたまま無音を避けたい」
という店舗と相性があります。
一方、
有名なJ-POPや演歌、特定アーティストの楽曲を店の個性として使いたい場合は向いていません。
その場合は、それらの楽曲を店舗利用できるサービスを選ぶ方が目的に合っています。
寿司店のBGMは「職人・寿司・会話のどれも邪魔しない音」で考える
寿司店には、他の飲食店にはない特徴があります。
目の前に職人がいる。
寿司が一貫ずつ完成する。
説明を聞く。
その場ですぐ食べる。
お客様の反応を職人も見る。
高価格帯のおまかせ寿司では、職人と客との距離そのものが商品になっています。
だからStore Soundでは、寿司店のBGMは、
「寿司にはどんな音楽が合うか」
という質問だけでは足りないと思っています。
カウンターなら、
職人の仕事や会話を邪魔しないこと。
個室なら、
会話をしやすく、周囲の音を少し意識しにくくすること。
海外客が多いなら、
日本らしさを少し補強すること。
そして店自体が静けさで成立しているなら、
無理に音楽を足さないこと。
同じ寿司店でも、必要な音は違います。
そして高単価の寿司店では、
流行りの曲を流す必要もありません。
寿司店のBGMでは、
音楽を主役にするのではなく、職人・寿司・会話が主役であり続けられる音環境をつくる。
それが、一番寿司店らしいBGMの考え方ではないでしょうか。
飲食店全体における音楽と味覚・料理選び・店舗体験の関係については、「飲食店と音楽の関係」の記事でも詳しく紹介しています。
