調剤薬局に、BGMは必要なのでしょうか。
患者さんは音楽を聴くために来るわけではありません。
処方箋を渡す。
薬ができるまで少し待つ。
薬剤師から説明を受ける。
薬を受け取って帰る。
長時間滞在する場所でもありません。
だから、調剤薬局のBGMに大きな演出は必要ありません。
ただ、薬局の待合スペースには、
体調が悪い人。
病院を受診した直後の人。
高齢者。
小さな子ども。
眠っている子どもを抱っこした保護者。
さまざまな人が同じ場所で薬を待っています。
Store Soundでは、調剤薬局のBGMを、
「長く楽しんでもらう音楽」ではなく、「短い待ち時間に余計な刺激を増やさないための背景音」
として考えるのが自然だと思っています。
調剤薬局では「何かして過ごす」時間でもない
カフェなら、コーヒーを飲みながら会話したり、本を読んだり、仕事をしたりします。
調剤薬局ではそうではありません。
基本的には、
薬ができるのを待っています。
実際、地域薬局の待合スペースで患者の行動を観察した研究では、多くの患者が待ち時間中に特別な行動をせず、そのまま待っていたことが報告されています。
つまり調剤薬局のBGMは、
「何時間いても飽きない音楽」
である必要はありません。
数分から十数分程度の待ち時間に、
音がうるさすぎない。
静かすぎない。
体調の悪い人にも負担になりにくい。
それくらいの役割で十分です。
眠っている子どもを抱えて薬を待つこともある
調剤薬局らしい場面の一つが、小さな子どもを連れた保護者です。
小児科を受診したあと。
熱がある。
咳が出ている。
病院で疲れて、ようやく寝た。
抱っこしたまま薬局へ入り、処方箋を渡して薬を待つ。
そんなことがあります。
ベビーカーで眠っている子どももいるでしょう。
この場面で、
大きな音。
テンポの強い曲。
主張の強いボーカル。
が流れている必要はありません。
むしろ、
せっかく眠った子どもを起こさないくらいの音環境
の方が自然です。
ヒーリングピアノ。
静かなピアノ。
オルゴール。
やさしいアコースティック。
こうした刺激の少ないBGMは、調剤薬局と合わせやすいでしょう。
「静かにしたい。でも静かすぎるのも気になる」
調剤薬局の音環境には、少し難しいところがあります。
患者さんは体調が悪いこともあるので、騒がしくしたくありません。
一方で、完全な無音になると、
受付の会話。
薬剤師の声。
電話。
調剤室の作業音。
他の患者さんへの説明。
といった特定の音が目立ちやすくなります。
薬局では健康状態や薬について話すため、会話の内容にはプライバシーへの配慮も必要です。
海外の282薬局を観察した研究では、薬剤師と患者の会話が離れた場所まで聞こえるケースが多く、薬局における会話のプライバシーが課題になり得ることが報告されています。
ただし、ここで注意したいことがあります。
BGMを流せば会話を聞こえなくできる、という意味ではありません。
服薬説明は患者さん本人にはきちんと聞こえる必要があります。
プライバシー対策をBGMだけに任せることもできません。
相談スペースの配置や距離、声量などの方が本質的です。
BGMに期待できるとすれば、
無音の中で特定の会話だけが妙に耳に入る状態を、少し和らげる背景音
くらいです。
調剤薬局では、
「静かであること」と「静かすぎないこと」の間
をつくることが大切なのだと思います。
実は「薬局の待合室のBGM」を直接調べた研究がある
調剤薬局のBGMについては、かなり直接的な日本の研究があります。
2014年に発表された研究では、都市部にある2つの薬局で、処方薬の調剤を待っている患者を対象に、BGMがある場合とない場合の気分変化が調べられました。
対象となったのは252人で、BGMを聴きながら待ったグループと、BGMなしで待ったグループが比較されています。
これは、
「医療施設一般」ではなく、実際の薬局で薬を待っている患者
を対象にしている点で、調剤薬局のBGMを考えるうえで参考になります。
もちろん、一つの研究だけで、
「薬局では必ずBGMを流すべき」
とは言えません。
店舗環境。
患者層。
音量。
選んだ音楽。
待ち時間。
などによって感じ方は変わります。
ただ、薬局の待ち時間に流れるBGMそのものが研究対象になっていることは、興味深い事実です。
待ち時間は、薬局の印象にも関わる
調剤薬局では、薬そのものが適切に用意されることが最優先です。
それでも患者側から見れば、
薬ができるまでの待ち時間も薬局で過ごす時間
です。
日本の地域薬局利用者を対象にした調査では、薬局サービスを高く評価する理由として薬剤師の説明やスタッフの対応などが挙げられる一方、低く評価した人では待ち時間が大きな不満要因になっていました。
BGMで調剤時間そのものを短くすることはできません。
でも、
5分待つ。
10分待つ。
その間をどんな環境で過ごすのかは考えることができます。
椅子。
空調。
照明。
掲示物。
スタッフの対応。
そして小さな音楽。
BGMは、あくまでその中の一つです。
長居しないからこそ、BGMを複雑にする必要もない
調剤薬局では、基本的に薬を受け取れば帰ります。
毎日数時間過ごす場所ではありません。
そのため、
大量のチャンネル。
細かな年代別選曲。
時間ごとの複雑なプレイリスト。
毎日の選曲。
まで必要としない薬局もあるでしょう。
患者さん側からすれば、
待っている間に穏やかな音が流れている。
それくらいで十分です。
薬局側も、
「今日は何を流そう」
と考える必要がない。
スタッフによって選曲が変わらない。
朝に再生すれば、あとは自然に流れている。
その方が運用しやすい店舗もあります。
「ヒーリングなら何でもいい」でもない
調剤薬局なら、
ヒーリング。
ピアノ。
オルゴール。
というイメージはあります。
実際、刺激を抑えたい待合スペースには合わせやすい音です。
ただし、
ジャンル名だけで決めればいいわけではありません。
音量が大きければ、静かなピアノでも負担になります。
高音が強いオルゴールを長時間大きく流せば、心地よいとは限りません。
大切なのは、
曲のジャンル以上に、
音量。
音の変化。
店舗の広さ。
スピーカーの位置。
患者さんが座る場所。
です。
特に調剤薬局では、
「いい音を聞かせる」より「刺激にならない」
ことを優先してよいでしょう。
テレビを置いている薬局なら、BGMが必要ないこともある
調剤薬局によっては、待合スペースにテレビがあります。
ニュース。
健康情報。
院内向けコンテンツ。
などを流している店舗もあります。
その場合、さらにBGMまで重ねる必要があるとは限りません。
テレビ音声。
BGM。
受付の声。
服薬説明。
が同時に聞こえれば、かえって騒がしくなります。
調剤薬局では、
「BGMを流した方がいいか」ではなく、「この待合スペースには今、どんな音があるか」
から考える方が自然です。
テレビが十分に背景音になっているなら、BGMなしという判断もあります。
YouTubeでヒーリング音楽を流せばいい?
「静かなピアノが流れていれば十分」
なら、
YouTubeでヒーリング音楽を流しておけばいい。
と思うこともあります。
ただ、
BGMに多くを求めないことと、店舗BGMとして何でもいいことは別です。
個人向けの動画・音楽サービスは、店舗でBGMとして利用することを前提にしていない場合があります。
また実際の薬局で、
広告が突然流れる。
動画が止まる。
次の動画だけ音量が大きい。
スタッフが再生操作をする。
といったことが起きれば、そのたびに受付業務が増えます。
体調の悪い患者さんや眠っている子どもがいる場所で、突然大きな広告音声が流れるのも避けたいところです。
「静かなBGMが流れていれば、それで十分」だからこそ、店舗用として必要な部分だけ整える。
そういう考え方もあります。
調剤薬局で使いやすいBGM
調剤薬局では、刺激の少ないインストゥルメンタルが使いやすいでしょう。
ヒーリングピアノ
音楽を前に出さず、静かな背景をつくりやすいジャンルです。
オルゴール
小児科周辺の薬局や、小さな子どもが利用する店舗でも合わせやすいでしょう。
ただし高音が強くなりすぎないよう、音量には注意が必要です。
静かなピアノ
年齢を問わず使いやすく、待合室のBGMとして存在感を抑えやすい音です。
やさしいアコースティック
明るく清潔感のある薬局で、少し柔らかな雰囲気を加えたい場合に使いやすいでしょう。
重要なのは、
「薬局だからヒーリング」ではなく、「待っている患者さんへの刺激を増やしていないか」
です。
Store Soundが合いやすい調剤薬局
Store Soundは、インストゥルメンタル中心の店舗向けBGMサービスです。
そのため、
- 待合スペースに穏やかな音が流れていれば十分
- ヒーリングピアノやオルゴールを使いたい
- 体調の悪い患者さんへの刺激を増やしたくない
- 小さな子どもや眠っている子どもが来る
- 無音で周囲の会話だけが目立つ状態を避けたい
- 有名曲を細かく選ぶ必要はない
- 毎日プレイリストを考えたくない
- 広告音声を薬局内に入れたくない
- YouTubeなど個人向けサービスで済ませたくない
- BGM管理をスタッフの仕事にしたくない
といった調剤薬局では使いやすい選択肢になります。
Store Soundは、
薬局のために何百種類もの音楽から細かく選曲するサービス
を目指しているわけではありません。
薬を待つ間に、患者さんの邪魔にならない音が流れている。
それで十分な薬局のためのBGMです。
調剤薬局のBGMは「短い待ち時間に、刺激を足さない音」
病院で疲れた子どもが、ようやく眠った。
保護者は抱っこしたまま処方箋を渡す。
薬ができるまで、椅子に座って少し待つ。
近くでは薬剤師が別の患者さんに説明をしている。
調剤室では作業が続いている。
そんな場所で必要なのは、
楽しい曲でも、
印象に残る曲でもありません。
静かに待てること。
でも、周囲の声や作業音だけが目立つほど静かすぎないこと。
その間に、小さくヒーリングピアノやオルゴールが流れている。
患者さんは曲名を覚えていないかもしれません。
それでいいのだと思います。
Store Soundでは、調剤薬局のBGMを、
「待ち時間を楽しませる音楽」ではなく、「短い待ち時間に余計な刺激を足さず、静かすぎる空間にもならないための音」
として考えています。
長居する場所ではない。
音楽を聴きに来る場所でもない。
だからこそ、BGMも必要以上のことをしなくていい。
患者さんが薬を受け取るまで、自然にそこにある。
調剤薬局では、そのくらいの音楽がちょうどよいのではないでしょうか。
クリニックや医療施設全体における待合室BGMの役割、不安やストレスと音楽についての研究は、親記事「クリニックと音楽の関係」でも詳しく紹介しています。
