小売店と音楽の関係|店内BGMは購買行動や商品選びに影響する?研究から解説

アパレルショップや雑貨店、書店、家具店など、小売店では当たり前のように店内BGMが流れています。

「無音だと寂しいから」

「お店の雰囲気を良くしたいから」

といった理由で音楽を流している店舗も多いのではないでしょうか。

しかし、小売店におけるBGMについては古くから研究が行われており、音楽のテンポやジャンル、商品との相性などが、店内での行動や商品選択に関係する可能性が報告されています。

もちろん、特定の音楽を流せば必ず売上が上がるわけではありません。

店舗の立地、商品、価格、接客、客層、混雑状況など、購買行動にはさまざまな要素が影響します。

それでも、内装や照明、陳列、香りなどと同じように、音楽も店舗の買い物体験を構成する要素の一つとして考える価値があります。

この記事では、小売店と音楽の関係について、実際の研究をもとに考えてみます。

目次

店内BGMのテンポで買い物のペースが変わる?

小売店と音楽に関する研究として有名なのが、1982年にRonald E. Millimanが発表した研究です。

Using Background Music to Affect the Behavior of Supermarket Shoppers

スーパーマーケットの実店舗でBGMのテンポを変え、店内での買い物行動を調べました。

その結果、店内BGMのテンポによって、買い物客が店内を移動するペースや売上に違いが見られました。

この研究は1982年に行われたものであり、現在のあらゆる小売店にそのまま当てはめられるものではありません。

しかし、「店内で流れている音楽は、単なる飾りではなく、人の行動と関係する可能性がある」ということを考えるきっかけになった代表的な研究の一つです。

大切なのは、

「遅い曲を流せば売上が上がる」

と単純化しないことです。

例えば、短時間で商品を選ぶ店と、商品を比較しながらゆっくり見てもらいたい店では、理想的な買い物のペース自体が異なります。

だからこそ、BGMのテンポも店舗でどのように過ごしてほしいのかから考える必要があります。

実際の小売店を使った研究でもBGMの影響が調べられている

2012年には、通常営業中の小売店舗で合計550人の消費者を対象とした研究も行われています。

Let the music play or not: The influence of background music on consumer behavior

この研究では、異なる2つの小売環境において、BGMがある場合とない場合で、消費者の行動や態度、気分などが調べられました。

興味深いのは、BGMの影響がどの店舗でも同じように現れるわけではなかったことです。

つまり、

「小売店なら音楽を流した方がいい」

という単純な話ではなく、店舗のタイプや利用するお客様などによって結果が変わる可能性があります。

これは実際の店舗でBGMを選ぶうえでも重要です。

アパレルショップと書店。

花屋と時計店。

スーパーと家具店。

同じ「小売店」でも、お客様が店内で行う行動は大きく違います。

音楽によって「選ぶ商品」が変わった研究もある

さらに面白いのが、BGMと商品選択の関係です。

1999年に発表された研究

The Influence of In-Store Music on Wine Selections

では、スーパーマーケットのワイン売場でフランスを連想させる音楽とドイツを連想させる音楽を流し、購入されるワインを比較しました。

その結果、フランスを連想させる音楽の日にはフランスワイン、ドイツを連想させる音楽の日にはドイツワインが選ばれやすくなる傾向が確認されました。

この研究から考えられるのは、音楽には単に気分を変えるだけではなく、商品を取り巻くイメージや文脈をつくる役割がある可能性です。

例えば、

和菓子店で流れる和楽器。

高級感のある時計店で流れる落ち着いたジャズ。

ナチュラルなインテリアショップで流れる穏やかなピアノ。

こうした組み合わせも、「このジャンルなら売れる」と考えるのではなく、商品・内装・ブランドと音楽の世界観が合っているかという視点で考えると分かりやすくなります。

「高級感」と音楽について調べた研究もある

1993年には、ワインショップでクラシック音楽と当時のヒット曲を流して買い物行動を比較するフィールド実験も行われました。

The Influence of Background Music on Shopping Behavior: Classical Versus Top-Forty Music in a Wine Store

研究では、クラシック音楽が流れていた条件で、購入された商品の価格帯に違いが見られました。

ただし、ここから

「高級店ではクラシックを流せば高い商品が売れる」

と考えるのは飛躍があります。

重要なのは、音楽が店舗や商品の印象と組み合わさることで、買い物をする際の雰囲気や商品に対する認識に影響する可能性があるという点です。

時計・宝飾店、家具店、洋菓子店など、商品の世界観そのものが購買体験の一部になる店舗では、特に考えておきたいポイントです。

音楽と店舗の雰囲気が合っていることも重要

小売店では音楽だけを単独で考えるのではなく、他の環境要素との組み合わせも重要です。

2001年に発表された研究

Congruency of scent and music as a driver of in-store evaluations and behavior

では、店内の香りと音楽の組み合わせが消費者の評価や行動にどのように影響するかが調べられました。

その結果、音楽と香りが持つ雰囲気が調和している場合に、店舗環境に対する評価などが高まる傾向が確認されています。

つまり、店舗BGMだけを切り離して、

「ジャズがいい」

「ローファイがいい」

「ピアノがいい」

と決めるのではなく、

  • 内装
  • 照明
  • 商品
  • 接客
  • 香り
  • ブランドイメージ
  • 客層

なども含めて、店舗全体として違和感がないかを考えることが重要です。

速いBGM・遅いBGM、どちらが正解というわけではない

近年も、BGMのテンポと消費行動について研究が続いています。

2023年に発表された研究

The effects of background music tempo on consumer variety-seeking behavior

では、5つの実験を通してBGMのテンポと商品の「バラエティ・シーキング」、つまり異なる種類の商品を選ぼうとする行動との関係が調べられました。

研究では、速いテンポのBGMによって、より多様な選択をしようとする傾向が確認されています。

また、実際の小売環境では店舗の混雑度と音楽のテンポの組み合わせについて調べた研究もあります。

An Upbeat Crowd: Fast In-store Music Alleviates Negative Effects of High Social Density on Customers’ Spending

この研究では4万件以上の買い物データが分析されており、混雑度によってBGMのテンポと購買行動の関係が変わる可能性が示されています。

つまり、

速い音楽が正解でも、遅い音楽が正解でもありません。

店舗の客層や混雑、商品、買い物に必要な時間などによって、適した音楽は変わります。

小売店のBGMは「小売だからこの曲」では決められない

一口に小売店と言っても、その中身はさまざまです。

例えば、

  • アパレル・靴
  • 雑貨
  • 時計・宝飾
  • 書店・文具
  • 家具・インテリア
  • 精肉・鮮魚
  • 花屋
  • 洋菓子
  • 和菓子

では、扱っている商品も、お客様が店内で過ごす時間も、求められる雰囲気も違います。

アパレルショップなら、ファッションやブランドの世界観を伝えることが重要かもしれません。

時計・宝飾店なら、商品をじっくり選べる落ち着いた空間が求められることがあります。

書店なら、本を探すことを邪魔しない音楽が適しているかもしれません。

花屋なら、植物や店内の雰囲気と自然になじむ音楽が合うこともあります。

和菓子店なら、日本らしい世界観を音楽でも表現するという考え方もできます。

つまり、小売店のBGMは、

「何を売っている店なのか」だけでなく、「どんな買い物体験をつくりたいのか」

から考える必要があります。

小売店でBGMを選ぶときに考えたいこと

研究だけから「このジャンルが正解」と決めることはできません。

そのうえで、実際の店舗では、

  • 取り扱っている商品
  • 商品の価格帯
  • お客様の年齢層
  • 滞在時間
  • 店舗の広さ
  • 混雑する時間帯
  • ブランドイメージ
  • 内装や照明
  • 音楽のテンポ
  • 音量
  • ボーカルの有無

などを考えながらBGMを選ぶと、店舗に合った音楽を考えやすくなります。

特に重要なのは、スタッフが好きな音楽と、お店に合う音楽は必ずしも同じではないということです。

店内BGMは、お客様が店舗に入ってから商品を見て、選び、購入するまでの空間全体で流れています。

だからこそ、音楽も店舗デザインの一部として考えてみる価値があります。

「売上を上げるBGM」ではなく「お店に合うBGM」を考える

小売店と音楽に関する研究を見ると、BGMのテンポやジャンル、商品との関連性などが、店内での行動や商品選択に関係する可能性が示されています。

一方で、その結果は店舗や状況によって異なります。

そのため、

「この曲を流せば売上が上がる」

と一律に結論づけることはできません。

それよりも、

「このお店で、どんな買い物体験をしてほしいのか」

を考える方が、実際の店舗BGM選びでは重要です。

商品、陳列、照明、内装、接客。

そして音楽。

それぞれがバラバラに存在するのではなく、店舗全体として一つの世界観をつくっています。

Store Soundなら小売店の業態からBGMを選べます

Store Soundは、小売店や飲食店、美容室、クリニックなど、店舗や施設で利用することを想定したBGMアプリです。

小売店でも、アパレルと和菓子店、時計店と花屋では、求められる雰囲気やお客様の過ごし方は異なります。

Store Soundでは、業態ごとに専用チャンネルを用意しています。下記がその専用チャンネルです。

対応業態
アパレル・靴
雑貨
時計・宝飾
書店・文具
家具・インテリア
精肉・鮮魚
花屋
洋菓子
和菓子
その他の小売店

ただし、この記事で紹介した研究からも分かるように、「アパレルならこの音楽」「書店ならこの音楽」と一律に決められるものではありません。

同じアパレルでも、若い世代を対象としたカジュアルな店舗と、高価格帯の商品を扱う店舗では、つくりたい雰囲気は異なります。

商品、客層、内装、滞在時間、店舗の世界観などを考えながら、そのお店に合ったBGMを選ぶことが大切です。

「小売店だから何か音楽を流しておく」のではなく、

このお店で、お客様にどんな時間を過ごしてほしいのか。

そこから店内BGMを考えてみてください。

BGMもまた、商品や陳列、照明、内装と同じように、お客様の買い物体験をつくる要素の一つです。

参考にした主な研究

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次